釧路発帯広行の上り普通列車2526Dと、12回目の交換をいって、浦幌を後にする。列車はその後、上り勾配区間を走り始めた。いつのまにかエンジンが、唸りをあげ続けている。と、山深い信号場で2429Dは静かに停車。常豊信号場である。上り線の脇にはわざわざ駅名標まで立てられており、駅に昇格してもおかしくないような気さえした。雪の舞い散る原生林の中、13回目の交換のため4分停車。やがて上り線を貨物列車が通り過ぎ、2429Dは再び釧路をめざした。その後も2429Dの力行は続き、雪化粧した原生林がうっそうたる山々の中を進む。終着の釧路まで、あと1時間半だな…などと思っていると、上厚内到着のアナウンスが流れた。山越えも下り坂に入ったようで、アイドリング音も静かになっていた。静かすぎる交換駅上厚内でも、やはり乗降客ゼロ。先の幾寅同様、古びた木造駅舎が印象的で、こちらもまるで映画のロケセットのような趣をたたえている。
観光産業の発達したスイスには、19世紀から20世紀にかけて麓から展望台まで客を運ぶ「登山鉄道」が発達し、登山口と登山口を結ぶ「山岳鉄道」も多い。このうち登山鉄道は、レールの中央で歯車をかみ合わせて登る形式が多く、それだけ急勾配で登るわけだ。距離は10キロ足らずだが、列車によってはアルプスの最高の「眺め」が楽しめるホテル(ホテル名、所在地、眺めのよい山)「ヴィクトリア・ユングフラウ」(インターラーケン)ユングフラウ「ホテル・ソンネンペルグ」(グリンデルバルト)アイガー、ヴェッター・ホルン「シャイテック・ホテルズ」(クライネシャイデック)アイガー「モン・セルヴァン・ウント・レジデンツ」(ツェルマット)マッターホルン「グアダヴァル」(スクオール)エンガディンの谷の風景「ボー・リヴァージュ」(ジュネーブ)モンブラン「ホテル・リギ・クルム」(リギ山頂)ベルナー・オーバーランド「ホテル・ベルビュー」(ピラトゥス)ユングフラウ「キルヒビュール」(グリンデルバルト)シュレックホルン時間近くかかる所もあり、非常にのんびりしていて面白い。
あるとき、スタッフと一緒に、真夜中の力二捕りオンザビーチを決行したときは、いったんカニを冷蔵庫で保存、翌日の晩飯にスタッフが料理してくれた。それだけじゃない。スタッフのランチを作っているとき、そばにいれば、必ずおすそわけしてくれる。以上のすべてがタダなのだ。彼らのおかげで食費がいくら浮いたかわからない。また彼らは、有力なローカルのトモダチでもあったりする。彼らは、地元のお祭り、穴場など地元の人しか知らない情報を山ほど持っている。それだけでも旅行者にとってはかなりオイシイ。しかしなによりもオイシイのは地元ならではのコネクション。彼らナシでは参加できないような結婚式や儀式に連れていってくれることも多いのだ。宿の兄さんが、近くの村で結婚式の前夜祭があるから行かないかと誘ってくれたことがある。人口100人足らずの小さくて貧しい村の結婚式は、なにかとしきたりが多いようだった。しかし村人は英語が話せないし、我々は現地語が話せない。結局、両方話せる宿の兄さんが通訳兼ガイドに早変わり。私達に、失礼のないような振舞い方や、段取りをしっかり教えてくれた。また、ある島に泊まっていたときは、宿のオーナーがボートで島一周に連れていってくれた。海ガメを見せてくれたり、地元の人しかいない気持ちのいい滝で泳いだりした。ごはんやお茶をご馳走してくれることも多いし、家に招待してもらったこともある。要するに、ちょっとディープなローカル体験をさせてくれるのだ。いい人がいる宿にあたるかどうか、そしてその人にうまくなつけるかどうか。これは旅の豊かさを大きく左右する。鼻を利かせてナイスな宿にありつこう。